今回のブックレビューは、シアターカフェの林緑子さんにアニメーションに関するおススメの一冊を紹介していただきました
『Adobe Premire Pro-After Effectsでクレイアニメ&人形アニメを作ろう!』
オカダシゲル、川村徹雄、小林正和、船本恵太 共著、2010年、ソシム株式会社
今は映像を観たい人より作りたい人が増えている、先日そんな話を知人から聞いた。この本は、まさに作りたい人のため、手取り足取り細かなところまで、人形や粘土などによる、コマ撮アニメーションの制作方法を紹介している。
どのような機材が必要で、どうやって脚本や絵コンテをかくのか、映像関連ソフトウェアの使い方など、そして、実際に撮影するための人形やセットの作り方、どうやって撮影していくのか、気をつけるべきことなど、本当に丁寧に豊富な図版付で紹介している。415ページ、3㎝弱の厚さ。ちょっとした辞書並みだ。
読み進むと、金属加工するためのボール盤やその他、いろいろな機材が必要だったり、石膏でかたどりをして、シリコン樹脂で型をつくるなど、道具や技術的な面で素人にはちょっと敷居が高いかもしれない。撮影編集に使用されるソフトウェアにしても、正規版はどれもかなり高価だ。
それはさて置き、プロとして仕事を実際にしている人たちが、どのような手順で作っているのかがわかる手引き本としても興味深い一冊だ。
この本を観ていくと1本の短いコマ撮アニメーション作品をきちんと制作するためには、どれだけの時間や手間がかかっているのかが、とてもよく伝わってくる。そうした、細かく丁寧で地道な作業工程を経て1本の映像作品が完成する。
パソコンの普及、廉価なソフトウェアの選択肢が広くなったこと、インターネット上でのさまざまなサイトによる情報提供などから、映像制作が手軽に誰でもできる可能性が広がった現在、趣味的な要素があれば、場合によってはフリーソフトで簡易な作ったものの方が受けたり、必ずしも、精巧さや完成度の高さが求められないことが増えた。
短時間で簡易に作られたものと、丁寧に時間をかけて作られたものでは何が違うだろうか。それぞれに光る部分や興味を引く要素があれば誰かにとっての良作となる。どちらが良いかは、その人それぞれの好みや考え方で決まってくる。
ともかくも、地道な職人的作業を経て作られる映像を知る手がかりとしても、本書は、おもしろく楽しめる一冊だろう。
林緑子
中区大須のシアターカフェ運営スタッフ
■クリスマス・アニメーション 大桃洋祐監督特集
丁寧にひとつひとつ手作りで制作されたアニメーション作品集をクリスマス企画として上映
日時/2012年12月22日(土)~24日(月祝) 15:00/19:00
会場/シアターカフェ(名古屋市中区大須2-32-34)
料金/1500円(1ドリンク付)
http://www.theatercafe.jp/schedule/screening/icalrepeat.detail/2012/12/22/426/-/