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2012年6月14日木曜日

『超芸術トマソン』 『新解さんの謎』

今回のブックレビューは、覚王山アパート「古本カフェ ソボクロ」のすずきめぐみさんに、「まち歩きが楽しくなる」一冊を紹介していただきました。
 
『超芸術トマソン』  赤瀬川原平著、1987年、ちくま文庫
『新解さんの謎』 赤瀬川原平著、1996年、文藝春秋
 
 
「考現学」という学問のカテゴリーがあることを学生時代に知りました。

アナログの カメラが好きだったことと、学生で暇だったということもあって
商店街や裏路地をぶらぶら歩いては「これは!」と思うものを写真に撮って遊んでいました。
それは本当にくだらないもの。古い看板や、独自の手書きの張り紙、時代に置き去りにされた商品や建物などなど。
撮った写真を自分なりのジャンルで分類してファイリングなどしていく。収集癖の一種でしょうか。ワクワクしました。

あるとき街で偶然、赤瀬川原平の展覧会をやっている会場にふらっと入りました。(赤瀬川原平の展覧会だったのかも
よく覚えていませんが・・・。たぶん名古屋の繁華街、伏見にあったINAXギャラリーだったような。)
そこで初めて「考現学」というものがあるのを認識したと思います。びっくりしました。路上で観察したことを事細かに記録し、整然と並べて発表している。「ただそ れだけのこと?」私はそんな「くだらないこと」を堂々と発表していいんだと衝撃を受けました。そして、自分の興味がある事がここにある事を確信し、晴れ晴れとした気持ちで会場を出た覚えがあります。

数年前から名古屋市千種区にある覚王山商店街の街づくりに携わっています。当初「覚王山の街を楽しく絵で紹介する、捨てられない絵地図を作ろう!」という計画で「覚王山マップ」を作ることになりました。もちろん私が下案の街の情報集め役! さっそく毎日覚王山の街を歩いて観察しました。普通では日常にとけ込みすぎて気付かないような些細な発見をどんどん地図に落とし込んで行く。どんな道にも何か発見があります。それをイラストレーターの伊藤ちづるさんにイラストにしてもらいました。完成したB2カラーのマップは今でも改訂&再版を繰り返しながら覚王山で無料で配布されています。マップを手に街を歩く若者が増え、覚王山の商店街が知られていきました。
世の中的にはどうでもいいモ ノをおもしろがる赤瀬川原平の『超芸術トマソン』。読売ジャイアンツに高額の契約金で雇われたゲーリー・トマソン選手が役に立たなかったことにちなんでつ けた「トマソン」のネーミングセンスも最高に面白いです。そして、新明解の国語辞典の語釈や用例の面白さを取り上げた『新解さんの謎』。どれもこれも、 「どうでもいい」「くだらない」が前提の発見がすばらしい。
この先も、街での活動やあらゆる自分の表現を、この「どうでもいいこと」を面白がる視点で盛り上げたいと思います。
 
 
すずきめぐみ
1972年6月生まれ。名古屋芸術大学美術学部卒業後、名古屋の情報誌「cheek」編集部に2年半ほど勤める。以降、何が本業なのかわからない。現在に至る。
覚王山アパート「古本カフェ ソボクロ」http://sobokuro.com
アトリエ&ギャラリー「日進木箱商会kibaco」nisshi-kibaco.com

秋に「覚王山参道ミュージアム」vol.13開催。庶民的まちなかアートイベントです。只今出展者募集中。
http://www.kakuozan.com