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2009年9月15日火曜日

『小山登美夫の何もしないプロデュース術』



小山登美夫・著
東洋経済新報社 1680円

TEXT:田中由紀子

奈良美智や村上隆を世界に売り出したことで知られる気鋭のギャラリスト、小山登美夫による、『現代アートビジネス』(アスキー新書)、『その絵、いくら』(講談社)に続く最新刊。自身の経験から、ビジネスとしてのギャラリストの仕事がわかりやすい言葉で綴られている。積極的に何かを仕掛けるのではなく、「引き算」と「ゆだねる」ことによる、できるだけ「何もしない」独自のプロデュース術が、アーティストの才能を引き出し、マーケットに影響力を及ぼしているのが興味深い。
また、他人のものさしではなく、自分のものさしで作品を見ることが大切であり、そのものさしを磨くためには面白くない絵でも見に行くといったくだりや、作品をじかに見ることが重要で、印刷物やインターネットなどの情報だけでわかったつもりになってはいけないなど、ハッとさせられる記述も。
ギャラリストやキュレーターを目指す人にはもちろん、見る側である美術ファンやコレクター、つくり手である作家にもオススメの一冊。