今回のブックレビューは、名古屋市美術館ミュージアムショップ・書籍担当の近藤 翼さんに、あいちトリエンナーレを楽しむためのオススメな一冊を紹介していただきました。
『 扉を開ける 』 島袋道浩作品集
出版社:リトルモア
いま、あいちトリエンナーレで、名古屋市美術館に作品を出品している島袋道浩(しまぶく・みちひろ)さん。
トリエンナーレ開催に合わせてベスト作品集が出版されました。
本のタイトルは『扉を開ける』。表紙の写真は『飛ぶ私』という作品です。
真っ青な空に浮かぶ、おじさん(?)っぽいシルエット…。
タイトルといい表紙といい、なんだか想像力を掻き立てられます。
扉を開けると、何が起こるんだろう?
扉を開けるのは、誰なんだろう?
なぜ「私」は、飛んでいるんだろう?
この作品集には島袋さんの20年間の代表作が収録されており、その全ての作品に、表紙と同じく、想像力を刺激されます。
平凡な言い方ですが、わくわくします。
ダンボール箱が関西弁で喋り出す作品。イギリスで犬の水泳大会を開催する作品。
ある時はタコを東京観光に連れて行き、築地で魚屋さんに「築地から生きて帰ったタコは一匹もいない!」と言わしめたり、またある時は、猿の気に入りそうなものを集めて「猿のための展覧会」を用意したり。
掲載された作品の写真と、タイトルと、ごく簡単な解説から、みるみるうちに想像が膨らんで、思わず笑ってしまいます。
島袋さんの作品は、世界中を旅して、いろんな人々や風景と出会うなかから生まれてくるのだそうです。そのせいか、どの作品からも「自由さ」を感じます。
「自由」と「ゆるやかな時間の流れ」、そして「ユーモア」が、全ての作品に通底しているように思います。
ああ、人って、もっとユルくていいんだな。
こんな風に自由に生きていくことだって出来るんだ。そう思わされます。
「自由に生きる」。それはつまり、自分で考え、自分の足で動き、草ぼうぼうの道なき道をかき分けていく覚悟と責任です。
好奇心とユーモアを味方に、未知の「扉を開ける」行為です。
ですから、真 に自由な人って、タダ者じゃないな…!と、そう思います。
そして島袋さんはまさに、そのタダ者じゃない人物なんだと思います。
こうやって「自由に生きる」ことでしか、島袋さんの数々の作品は生まれ得なかったのではないでしょうか。
島袋さんの20年間の作品は、島袋さんの生き方そのもののように思えてなりません。
近藤 翼/名古屋市美術館ミュージアムショップ・書籍担当
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